一下級将校の見た帝国陸軍 |山本 七平
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文藝春秋 (1987/08)
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究極的に事実を語る
「虚構」のメカニズム
現代にも通じる日本の組織の問題点(私の評価:★★★★☆:買いましょう。素晴らしい本です)
●帝国陸軍の実態を、内部から観察し、その実態を分析した一冊です。
●著者によれば、帝国陸軍では、現実を直視しない、
作精神論だけの虚構の世界が作られていました。
・結局、大本営や方面軍司令部の参謀たちが勝手に書いたシナリオでは
そうなっているというだけのこと、そしてそのシナリオに応じて
師団の参謀たちは空虚な“大熱演”を演じ、その熱演に自ら酔って
発した放言が、命令となり指示となって四散し、それによって人びとが
次から次へと死屍になっていっただけであった。(p191)
●こうした精神絶対主義は、帝国陸軍だけではなく、
日本人の本質から産まれてくるものである、
という著者の主張が、私の経験でもまったくその通り
と思わざるを得ないのが恐ろしいところです。
・不思議なことに、精神力を否定するかに受け取られそうな言葉は、
絶対だれも口にはしない。そして、軍隊外の人間には、徹底して
口にしなかった。ここには奇妙なタブーがあった。そしてこれは、
戦後社会にも存在するある種のタブーと同根のもの・・・(p41)
●「できません」などとは言えない。
言えば、「どうすればできるか考えろ」
というのが、日本の日常風景ではないでしょうか。
●また、日本の組織の中には、学歴至上のキャリア組のようなものを作り出し、
現場のノウハウはたたき上げの人に任せるといった
お役所のような組織も多いと思います。
そのような組織は、現状維持には最適ですが、
根本的な変化が求められるときには、最悪の組織となるようです。
・「従って、調子のいいときはいいし、その組織の運営の仕方だけで
対処できる間はこれが一番いいんですよ。だが、組織そのものの
中身を変えて対処しなければならない場合は、だめですな。結局、
壊滅するまで同じ行き方を繰り返しながら、それ以外に方法がない
という状況になっちまうんです・・・。」(p54)
●良い例として、「技術の日産」があります。
カルロス・ゴーン以前の日産は、危機的状況にありながら、
今までどおりの車作りしかできませんでした。
「技術」が立派ならそれでよかったのです。
しかし、カルロス・ゴーンという指揮官を得て、変化することが
できたということなのでしょう。
・この砲は世界の最高峰、火砲が達しうる極致だというのが軍の
常々の自慢・・・確かにその通り。ところが、それだけの砲弾を
砲側に運ぼうとすれば、強大な補給能力が要請される。だがそれを
だれも考えない。砲が立派ならそれでよいのである。(p171)
●だんだん暗い気持ちになってくるのですが、
そうした日本人の気質を理解しつつ、自分はいかにしていくべきか、
ということを考えさせてくれる一冊として★3つとしました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・それはいずれの時代でも同じかもしれぬ。渦中にいる者は不思議な
ほど、大局そのものはわからない。(p60)
・参謀本部は、昭和初期から南方方面占領の作戦計画だけは立てており、
その際、占領軍が「現地自活」することは、規定の方針だったという。
このこと自体が、いかに現地に対して無知であり、何一つ真剣に調査
していなかったかの証拠といえよう。(p83)
・われわれは、前述のように、「戦争体験」も「占領統治体験」もなく、
異民族併存社会・混血社会というものも知らなかったし、今も知らない。
知らないなら「無能」なのがあたりまえであろう。(p96)
・今の今まで「絶対にやってはいけない」と判断を下していたそのようなことを、
なぜ急に一転して「やれ」と命ずるのか・・・「戦闘機の援護なく戦艦を出撃
させてはならない」と言いつつ、なぜ戦艦大和を出撃させたのか(p112)
「一下級将校の見た帝国陸軍」山本 七平、文藝春秋(1987/8) ¥540
(私の評価:★★★★☆:買いましょう。素晴らしい本です)
■関連書籍
・山本七平の日本の歴史〈上〉

